25/07/2026
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花の記録 10
クレマチス「水面の妖精」
クレマチスには華やかな園芸品種がたくさんあるのだけれど、「水面の妖精」を市場で見つけたとき、私は思わず足を止めた。
手に取れば壊れてしまいそうなほど繊細で、どこか儚い。その姿に惹かれ、店へ連れて帰らずにはいられなかった。
作出者は、個人育種家の廣田哲也さん。2012年頃に生まれた比較的新しい品種だという。ここ数年で切り花として市場に並ぶようになったという私の感覚は、間違っていなかったようだ。
針のように細い茎の先に咲くのは、大輪の花。その色は一言では表せない。グレーパープルの中に淡い緑が溶け込み、クリーム色の筋と、そばかすのような斑点が重なる。光を受けるたびに、その表情は静かに変化していく。
その揺らぎは、風に揺れる水面に映る景色のようでもある。
「水面の妖精」という名の由来は見つけることができなかった。
けれど、この花を見ていると、花びらそのものが水面なのではなく、光を受けて移ろう色の変化こそが、その名の由来なのではないかと思えてくる。まるで、水面そのものが花になったようなクレマチスだ。
細すぎるほど細い茎。その先で風を受け、大きな花がゆっくりと揺れる。
その姿から「妖精」という言葉が不思議なほど自然に思い浮かぶ。
「水面の妖精」という名前は、花を説明するためというより、その花が見せる情景に与えられた名前なのかもしれない。
花の姿だけでなく、その花が見せる情景まで名前に託そうとする、日本らしい感性の豊かさを感じる。
私はこの花を生けるとき、一本一本の向きや開き方を見極め、花と相談しながら、空間のあちらこちらへと置いていく。
まるで、妖精たちが楽しそうに水面を飛び交うように。
光を受け、風に揺れるその姿を見ていると、「水面の妖精」という名前が、少しだけわかったような気がする。
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